要旨

背景:

心疾患診断用シミュレータでのトレーニングは、同じシミュレータを使って行うその後の診断パフォーマンスを改善する。しかし、実践への移行学習についてのデータは不足している。本研究の目的は、心疾患診断用シミュレータでのトレーニングが実際の患者における診断パフォーマンスをも改善するかどうかを評価することであった。

 

方法:

カルガリー大学の医学部1年生を対象に、急性胸痛に関する3つの臨床シナリオ(右室負荷を伴うが雑音を聴取しない肺塞栓症、症候性大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症をきたした心筋虚血)のいずれか1つを無作為に割りあて、シミュレータを用いたシナリオトレーニングを行った。シミュレーションセッションは20分で展開され、その後、参加者は標準化されたディブリーフィングセッションを終え、身体所見の確認を行った。トレーニングセッションの直後、学生は実際の僧帽弁閉鎖不全症患者において聴診所見の評価を行った。評価項目は、聴診における異常所見の検出精度および背景にある心疾患(僧帽弁閉鎖不全症)の診断精度とした。

 

結果:

86名の学生が本研究に参加した。僧帽弁閉鎖不全症に関するトレーニングを受けた学生は、大動脈弁狭窄症のシナリオや心雑音のないシナリオでトレーニングを受けた学生よりも、実際の僧帽弁閉鎖不全症患者における当疾患の所見の検出率また診断率が高かった。これら3つのグループにおける僧帽弁閉鎖不全症の臨床所見の検出精度(SD)はそれぞれ74.0(36.4)、56.2(34.3)、36.8(33.1)であり(P = 0.0005)、僧帽弁閉鎖不全症の診断精度はそれぞれ68.0(45.4)、51.6(50.0)、29.9(40.7)であった(P = 0.01)。

 

結論:

僧帽弁閉鎖不全症についてシミュレーショントレーニングを行うことにより、実際の患者においてこの異常を診断できる可能性が高くなる。